檻前山深水寒
檻前山深くして水寒し
『碧巌録』第二則
天際日上月下、檻前山深水寒。
天際日上り月下る、檻前山深くして水寒し。
- 天際 … 天の果て。空のかなた。
- 檻 … おばしま。てすり。欄干。
- 入矢義高監修/古賀英彦編著『禅語辞典』には、「天空では日が昇るとき月が落ち、おばしまの前では山は遠く水が冴える。個々の現象が動静それぞれに完結していることをいう」とある。【天際日上月下、檻前山深水寒】
- 柴山全慶編『禅林句集』には、「遍界曽て藏さず、本分現成の妙景。檻はテスリのこと」とある。【天際日上月下檻前山深水寒】
- 『禅語字彙』には、「天にありては、日は上り月は沈み、地にありては、目前山深く水すさまじ。徧界曾て蔵さず、又何をか疑はんの意」とある。【天際日上月下檻前山深水寒】
- 有馬頼底監修『茶席の禅語大辞典』には、「東の空に太陽が上がれば、月は西へ沈む。また、目の前に広がる深山幽谷の景色も、ことごとく真理の姿を露呈している。尽大地隠すところなく、どこもかしこもありのままの実相であるということ。……」とある。【天際日上月下 檻前山深水寒】
- 芳賀幸四郎『新版一行物』には、「……この二句は『朝になって東の空に太陽が昇ると、月は西山へ沈む。寺の前には谷川が流れているが、山が深いのでその水は清く冷たい』というほどの意味である。(中略)雪竇がその偈頌に、なぜこの当り前のことを示す二句を織りこんだのか、(中略)『至道というものは、ことほどさように明白で当り前のものである』ことを示そう、という意図にほかならないのである」とある。【檻前山深水寒】
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