野老拈花萬國春
野老花を拈ず万国の春
『臨済録』行録
到大慈。慈在方丈内坐。師問、端居丈室時如何。慈云、寒松一色千年別。野老拈花萬國春。
大慈に到る。慈、方丈の内に在って坐す。師問う、丈室に端居する時如何。慈云く、寒松一色千年別なり。野老花を拈ず万国の春。
- 寒松 … 冬の松。
- 野老 … 田舎の粗野な老人。
- 柴山全慶編『禅林句集』には、「色變えぬ老松の見事さ、村の翁も花を樂しんで世は春の長閑けさ」とある。【寒松一色千年別野老拈花萬國春】
- 『禅語字彙』には、「我は千年に色を變へぬ松の如くだが、汝は諸方に花を探しまわる野老の如しの意……」とある。【寒松一色千年別野老拈花萬國春】
- 芳賀幸四郎『新版一行物』には、「……寒風吹きすさぶ荒野の中に翠色も鮮やかに毅然と立つ一本松、あるいは『冬嶺に秀でる孤松』にたとえて表現したのが、前句の『寒松一色 千年別なり』である。(中略)孤独寂寥・冷厳毅然たるものではあるが、そこがそのままで大閑のあいた老翁が花を手にして、天下泰平の春を謳歌しているのにもたとえるべき、のどかでなごやかで悠々閑々とした境涯である。それを『野老花を拈ず 万国の春』と表現したのだとみる解釈である」とある。【寒松一色千年別 野老拈花万国春】
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