一翳在眼空華亂墜
一翳眼に在れば空華乱墜す
『景徳伝灯録』巻十
福州芙蓉山靈訓禪師、初參歸宗。問、如何是佛。宗曰。我向汝道。汝還信否。師曰、和尚發誠實言、何敢不信。宗曰、即汝便是。師曰、如何保任。宗曰、一翳在眼空華亂墜。
福州芙蓉山霊訓禅師、初め帰宗に参ず。問う、「如何なるか是れ仏」。宗曰く、「我汝に向って道わん。汝還って信ずるや否や」。師曰く、「和尚誠実の言を発せば、何ぞ敢えて信ぜざるや」。宗曰く、「汝に即すれば便ち是なり」。師曰く、「如何が保任せん」。宗曰く、「一翳眼に在れば空華乱墜す」。
- 一翳 … ちょっとしたかげり。
- 空華 … かすんだ目で空を見るとき、ちらちら見える花のようなもの。実体のないものを実体と見誤ることのたとえ。
- 乱墜 … 乱れ落ちること。
- 『新版 禅学大辞典』には、「眼病のために、実際には花が無いのにも拘わらず、空中にいろいろな花があるかのごとく見えること。転じて心病に陥っている者が、その迷妄の心により、本心がくもりさえぎられ、ものの真相を正しく見ることができないで、虚偽の仮相を見て、それをそのものの実態であるかのように思い誤っていることをいう」とある。【一翳在眼空華亂墜】
- 入矢義高監修/古賀英彦編著『禅語辞典』には、「眼にちょっとでも病いがあるとまぼろしの花が空中をみだれ飛ぶ」とある。【一翳在眼、空華乱墜】
- 柴山全慶編『禅林句集』には、「小さい埃一つが眼に入ると眼がチラチラする。心中一念の汚れあれば様々の煩惱となる」とある。【一翳在眼空華亂墜】
- 『禅語字彙』には、「惑相を一度認むれば、眼中の翳の如く、それからそれへと妄想が亂發するの意」とある。【一翳入眼心華亂墜】
- 有馬頼底監修『茶席の禅語大辞典』には、「ちいさな塵がひとつ眼に入っただけで、花のような幻がチラチラと乱れ飛ぶ。同様に心中にわずか一点でも汚れがあると、さまざまな煩悩妄想を引きおこすもの。心を清く保ちなさいとは、遠く釈尊よりの教えである」とある。【一翳入眼 空華乱墜】
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関連リンク
- 禅林句集(国立国会図書館デジタルコレクション)
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