柳緑花紅
柳は緑、花は紅
薛稷「唐永昌に餞す」
河洛風煙壯市朝
河洛 風煙 市朝を壮にす
送君飛鳧去漸遙
君を送る 飛鳧 去ること漸く遥かなり
更思明年桃李月
更に思う 明年 桃李の月
花紅柳緑宴浮橋
花は紅 柳は緑 浮橋に宴す
- 「柳緑花紅」の出典は一般に蘇東坡(1036~1101)の詩であるといわれているが、薛稷(649~713)などの詩に「花紅柳緑」と前後が逆になって出てくる。ウィキソース「餞唐永昌(薛稷)」(『全唐詩』巻93所収)参照。
- 薛稷 … 649~713。初唐の書家・画家。蒲州汾陰県(山西省運城市万栄県)の人。字は嗣通。則天武后の天授二年(691)、進士に及第。官位は晋国公に至る。欧陽詢・虞世南・褚遂良とともに初唐四大家の一人。ウィキペディア【薛稷】参照。
- 唐永昌 … 人名。薛稷の友人と思われるが、人物については不詳。
- 餞 … ここでは、旅立つ人に心をこめて詩歌を贈ること。
- 河洛 … 黄河と洛水の流域地方。
- 市朝 … 町なか。
- 飛鳧 … 空を飛ぶ水鳥。
- 桃李月 … 桃や李の花が咲く頃の月。弥生の月。
- 浮橋 … 舟を並べ、その上に板などを置いて作った橋。
- 入矢義高監修/古賀英彦編著『禅語辞典』には、「あらゆるものがそれぞれの在りように安らいでいるさま。『花紅柳緑』ともいう」とある。【柳緑花紅】
- 柴山全慶編『禅林句集』には、「見たまま、そのまま、いずれも眞理の具體相。悟りの現われ」とある。【柳緑花紅】
- 『禅語字彙』には、「色も違ひ形も異るが、何れも眞如法界の表相で、差別のまゝ眞實平等の性相を現はして居るの意。東坡の詩句に、『柳緑花紅眞面目』とあり」とある。【柳緑花紅】
- 芳賀幸四郎『新版一行物』には、「……柳も桃花も、ないし松も竹も、犬も猫も、法性の体現者として平等であることを十分に承知の上で、しかも具体的な形相・作用からみた場合、それぞれに個性をもち千差万別であることを、差別の面に重点をおいて、具体的に説いた句なのである。(中略)さらにまた、『柳は緑、花は紅、松は曲り、竹は直し』というように、万物がそれぞれ個性を発揮しながら存在し、しかもいずれもみなそのままで仏身であり、真如実相であり、箇々に尊厳な存在であることを説き、かつ万物が相倚り相助け合って美しい大調和の世界・涅槃を現成せしめていることを暗に示しているのである」とある。【柳緑花紅】
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