壺中日月長
壺中日月長し
『虚堂録』巻八
只知池上蟠桃熟、不覺壺中日月長。
只池上に蟠桃の熟すを知り、壺中日月長きを覚えず。
- 蟠桃 … 仙人が住む山の中にあるという桃の木。三千年に一度実るという。
- 壺中 … 悟りの境地の喩え。別天地。仙境。「壺中天」「壺中天地」とも。
- 日月長 … 時間の単位が長いこと。時間的制約や束縛を超越していること。
- 入矢義高監修/古賀英彦編著『禅語辞典』には、「中国の伝説によれば壺の中に別天地があって、日月の運行は長久だという。『後漢書』費長房伝など。完結した一つの世界にめでたく安住することへの批判としても用いる」とある。【壺中日月長】
- 柴山全慶編『禅林句集』には、「別天地(悟りの世界)に時間はない。後漢の時、壺公という仙人が一つの壺を自分の住家とした故事」とある。【壺中日月長】
- 『禅語字彙』には、「別天地の境界をいふ」とある。【壺中日月長】
- 芳賀幸四郎『新版一行物』には、「事実、相対未だ分かれない以前の悟りの世界は、『般若心経』にもあるとおり『不生不滅』なもの、時間と空間とを超越したもので、そこには大小・長短・広狭・曲直などの差別はない。これが『壺中 日月長し』の禅的解釈の基本である。(中略)茶道とはまさに、狭小な室内に時間と空間とを超越した別天地を開き、『壺中 日月長し』の禅的な真意を、生活に即して如実に具現するものでなければならない。世俗とは次元を異にする別天地をそこに開き、主客ともに心ゆくまでこの世界に遊戯することでなければならない」とある。【壺中日月長】
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