悠然見南山
悠然として南山を見る
陶淵明「飲酒二十首 其五」
采菊東籬下
菊を采る東籬の下
悠然見南山
悠然として南山を見る
- 東籬 … 東側の垣根。
- 入矢義高監修/古賀英彦編著『禅語辞典』には、「陶淵明の有名な『飲酒』の詩の句。達磨が中国に禅を伝える以前に、淵明はすでに禅の体得者であったとする宋代の論者は、たいていこの句をその証拠として取り上げる」とある。【採菊東籬下、悠然見南山】
- 柴山全慶編『禅林句集』には、「佛法世法共に脱け切つた大閑人の境界」とある。【採菊東籬下悠然見南山】
- 『禅語字彙』には、「陶淵明の詩句を禪話に轉用して、佛法世法、倶に超越したる大閑人の境界をいふ」とある。【採菊東籬下悠然見南山】
- 芳賀幸四郎『新版一行物』には、「……『庵の東側の垣根に咲いている菊を折り取っていると、ふと、見るともなく南の山の悠揚迫らぬ山容が目に入る。私はその山をゆったりとした気持で眺めている』という第五・六句は、彼の超俗脱塵の生活とその心境とをいみじくも表現した佳句として、古来、人口に膾炙しているものである。(中略)禅者は決して仙人や隠者とは同列ではないが、自然を友とした超俗脱塵の生活にあこがれることは事実である。禅者がこの句を愛誦し、これを揮毫するのは、その点で深く相通ずるものがあるからである。(中略)この一軸はその五字だけからみれば、春夏秋冬いつ掛けてもよいようであるが、『菊を采る東籬の下』の句と対句をなしているのだから、やはり秋の茶席に掛けるのが尋常であろう」とある。【悠然見南山】
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