白雲抱幽石
白雲幽石を抱く
謝霊運「過始寧墅」、『寒山詩』
〔謝霊運「始寧の墅を過る」〕
白雲抱幽石
白雲抱幽石
白雲幽石を抱き
緑篠媚清漣
緑篠は清漣に媚ぶ
〔寒山詩 一〕
庭際何所有
庭際何所有
庭際に何の有る所ぞ
白雲抱幽石
白雲幽石を抱く
- 白雲抱幽石 … この句は『寒山詩』の冒頭に見えるが、もとは謝霊運(385~433)の詩の一句である。
- 始寧 … 地名。現在の浙江省紹興市上虞区のあたり。
- 墅 … 休息用の小さい家。別荘。
- 過 … 通り過ぎる。通過する。
- 幽石 … 幽寂の石。物静かな岩。
- 緑篠 … 緑の篠竹。
- 清漣 … 澄んだ水の表面に立つさざ波。
- 庭際 … 庭先。
- 庭際何所有 白雲抱幽石 … 入谷仙介/松村昻『禅の語録 13 寒山詩』〔一〕は、「わが家の庭前にあるものは何だろうか。白雲がおぐらい石を抱きかかえるように立ちのぼるばかりなのだ」と訳している。
- 入矢義高監修/古賀英彦編著『禅語辞典』には、「白雲がひっそりと隠れた石を抱いている」とある。【白雲抱幽石】
- 柴山全慶編『禅林句集』には、「深山の妙景。道人の心中の閑寂境」とある。【白雲抱幽石】
- 芳賀幸四郎『新版一行物』には、「……世俗との交渉を断ち、俗情を払拭して深山に幽居する隠者寒山の境涯を、まことによく髣髴とさせる句である。(中略)露地草庵は利害・得失・憎愛・毀誉などの世俗の塵埃を払却した、白雲深い別天地であるべきである」とある。【白雲抱幽石】
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