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桂輪孤朗碧天濶

桂輪孤朗碧天濶

桂輪けいりんひとほがらかに碧天へきてんひろ

『円覚経略疏註』序
處生死流、驪珠獨耀於滄海、踞涅槃岸、桂輪孤朗於碧天。大矣哉、萬法資始也。
しょうながれにところして、しゅひと滄海そうかい耀かがやき、はんきしきょして、桂輪けいりんひとほがらかに碧天へきてんひろし。だいなるかな、万法ばんぽうりてはじむるなり。
  • 驪珠 … りょうという黒い龍のあごの下にあるという玉。得がたくて高価なものの喩え。
  • 桂輪 … 月の異称。
  • 滄海 … 青海原あおうなばら大海原おおうなばら
  • 円覚経略疏註 … 大正蔵39巻、No. 1795「大方廣圓覺修多羅了義經略疏註」。宗密述。
  • 柴山全慶編『禅林句集』には、「天空に一輪の月が輝く。心性玲瓏として大千世界に輝く」とある。【桂輪孤朗碧天濶】
  • 『禅語字彙』には、「桂輪は月なり、佛性に喩へ、碧天は、清淨法界をいふ」とある。【桂輪孤朗碧天濶】
  • 芳賀幸四郎『新版一行物』には、「この『桂輪孤朗碧天濶――桂輪ひとり朗らかに碧天ひろし』という句の表面の意味は、
    雲一つなく晴れわたった広い大空に、一輪の月が皓々こうこうと輝き、静かに地上の万物を照らしている。
    というほどのことである。(中略)だが、禅者はこの句の裏に別な意味をこめて、揮毫するのである。
     『雲収万岳月上中峰――雲万岳におさまって、月 中峰に上る』という句があるが、この句は月の出に託して、
    坐禅三昧のぎょうのかいがあって、今まで心中にむらがり起こり、わだかまっていた煩悩妄想の雲がいつか消散し、本具の仏性・真如の月が姿をあらわしてきた、悟りが開けた。
    という体験を美しく表現したものである。『桂輪孤り朗らかに碧天濶し』の『桂輪』が同じく開悟の当体である仏性をさし、『碧天』が煩悩妄想の雲・迷運の一片もない澄みきった心境をさすことは、今さらいうまでもあるまい。但し『雲収万岳……』のほうが、月の出の時刻、開悟の段階であるのに対し、この『桂輪孤朗……』のほうは月が天心にのぼった中夜の時刻、すなわち修行がぐんと進んだ段階である」とある。【桂輪孤朗碧天濶】
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