紅爐一點雪
紅炉一点の雪
『碧巌録』第六十九則
垂示云、無啗啄處、祖師心印、狀似鐵牛之機。透荊棘林衲僧家、如紅爐上一點雪。
垂示に云く、啗啄の処無き、祖師の心印は、状鉄牛の機に似たり。荊棘の林を透る衲僧家は、紅炉上一点の雪の如し。
- 紅爐 … 火の赤く燃えている囲炉裏。
- 『新版 禅学大辞典』には、「火の盛んに燃えている炉の上の一片の雪。(1)無常なこと、はかないことのたとえ。(2)跡が残らないことのたとえ。没蹤跡の境地」とある。ここでは(2)の意。【洪鑪(紅爐)上一點雪】
- 入矢義高監修/古賀英彦編著『禅語辞典』には、「紅焔を上げる炉のほとりの一点の雪。なんの痕跡も残さないものの喩え」とある。【紅炉上一点雪】
- 柴山全慶編『禅林句集』には、「火炎上の雪はすぐ消える。何の跡形もない。問題にならぬ」とある。【紅爐一點雪】
- 『禅語字彙』には、「忽ち消へて毫も跡方の無きをいふ」とある。【紅爐上一點雪】
- 芳賀幸四郎『新版一行物』には、「……紅蓮の炎をあげて燃えさかる溶鉱炉の上に一片の雪が舞い落ちたらどうなるか、ジュッともいわずすぐに溶けて蒸発してしまうことはいうまでもない。この『紅炉上 一点雪』という句は、実はそうした物理的現象にたとえて、真の禅者のいきいきとした正念相続の様子、ヒョイヒョイと沸き起こってくる雑念をスーッと正念化してしまう様子を説いたものなのである。(中略)常人の場合は、この一念を二念・三念と発展させ、連想を重ねてとほうもないところまで脱線し、雑念妄想のとりことなってしまうが、真の禅者の場合は、その一念をあたかも『紅炉上 一点雪』のように、正念の炎で溶かし蒸発させてしまい、二念・三念に発展させることはない」とある。【紅炉上一点雪】
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