臘月扇子
臘月の扇子
『景徳伝灯録』、『虚堂録』、『大慧録』他
〔景徳伝灯録、巻十七、雲居道膺禅師〕
體得底人、心如臘月扇、口邊直得醭出。不是汝彊爲、任運如此。
體得底人、心如臘月扇、口邊直得醭出。不是汝彊爲、任運如此。
体得する底の人は、心、臘月の扇の如く、口辺に直に得たり、醭出づることを。是れ汝彊いて為すにあらず、任運に此くの如し。
- 臘月 … 陰暦十二月の別称。
- 醭 … 白いかび。
- 『新版 禅学大辞典』には、「無用なもののこと。また、無事安閑なことにもいう」とある。【臘月扇子】
- 柴山全慶編『禅林句集』には、「冬に扇子は無用。無用の長物」とある。【臘月扇子】
- 『禅語字彙』には、「臘月は十二月の義。寒中の扇子で、誰も相手になる者はないの意。また無用の義にいふことあり」とある。【臘月扇子】
- 『句雙葛藤鈔』には「無用処ト云心ナリ」とある。【臘月扇子】
- 芳賀幸四郎『新版一行物』には、「……禅家で珍重する『役立たず』は、はじめからの無能のことではない。修行に修行を重ね、練磨に練磨を積んだあげくに到達する『愚の如く、魯の如し』といわれる境涯、『絶学無為の閑道人』(『証道歌』)の境涯のことである。(中略)この軸は、以上のような意味内容からいって、物でいえば『大わびもの』というべきであり、修行の若い方が掛けるにはいささかどうも不向きであろう。老境で円熟した方が『柿の蔕』の茶碗などと組み合せて、歳末の茶会などに使われたら一段とおもしろいと思うが、どんなものであろうか」とある。【臘月扇子】
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