閑眠高臥對青山

閑眠（かんみん）高（こう）臥（が）青山（せいざん）に対（たい）す

『碧巌録』第二十四則

穴云、老倒疎慵無事日、閑眠高臥對青山。

穴（けつ）云（いわ）く、老倒（ろうとう）疎（そ）慵（よう）無事（ぶじ）の日（ひ）、閑眠（かんみん）高（こう）臥（が）青山（せいざん）に対（たい）す。

老倒 … 老いぼれ。
疎慵 … だらけること。『禅林句集』では「疎懶」に作る。同義。
閑眠 … 『延宝伝灯録』では「安眠」に作る。
柴山全慶編『禅林句集』には、「老來世事も面倒になつた、塵外に山水を友として過そう。眞にすり上げた道人の境界」とある。【老倒疎慵無事日安眠高臥對青山】
『禅語字彙』には、「老後の山居をいふ」とある。【老倒疎懶無事日安眠高臥對青山】
『句雙葛藤鈔』には「無事閑道人ノ作用也」とある。【老倒疎慵無事日閑眠高臥對青山】
芳賀幸四郎『新版一行物』には、「……表面の意味は『老齢になって何をするのもものうく、枕を高くしてゴロリと大の字に寝て窓外の山を眺める』ということである。しかしその真意は、禅のいわゆる帰家穏（おん）坐（ざ）の境涯、閑（かん）古（こ）錐（すい）の境涯、さらにいえば『利休』の真義を比喩的に説いたものなのである。（中略）『利休』とはあたかも閑古錐のように鋭利な機用が影をひそめたということ、『鋭利休（きゅう）歇（けつ）』ということである。この鋭利さの休歇した愚の如く魯の如き『利休』の境涯、『無事是れ貴人』の境涯を、禅のいわゆる着語の体裁で比喩的に表現したのが、『老倒疎慵　無事の日　閑（安）眠高臥　青山に対す』という二句であり、また前にあげた『遠山限り無し碧層々』という句なのである」とある。【閑眠高臥対青山】

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